古川日出男 / gift(ASIN:4087747212)

rekoba2005-01-12

これは少し前に出た古川日出男の短編集。ほとんど全部10ページ程度で、すぐに読めちゃうお手軽な感じが魅力です。どの話もとってもユーモアにあふれていて、とにかくカッコいい。彼の想像力が産んだ宝石のようなこれらの作品は、村上春樹の作品をアップデートしたかのような印象を受けます。

時どき思う。誰が不幸だったんだろう?
両親が死んでも、従妹はいわゆる孤児として悲運にはさらされなかった。人間の子供だったら、一歳にも満たないで二親を亡くしたら、たぶん精神にすごい傷を負っただろう。だけどいま、猫の従妹はここにいる。部屋の日だまりで丸まり、安心した寝息をたてている。
叔父夫婦のことを考える。ただ一人の娘にこんなに早く訣別しなければならなかったのに、愛しつくすことのできた二人を。
だれが不幸だったんだろう?

ハロー神さま、と光の速度で祈ってる。
かわいい壊れた神さまに。


ぼくはこの本を読んで浅井健一のこんな台詞を思い出しました。
「麻薬なんていらない。だって、オレは想像することができるから」


「沈黙」や「アビシニアン」、「アラビアの夜の種族」などといった中〜長編とはまた違うおもしろさのこの作品。みなさんも是非読んでみてください。きっと気に入ってもらえると思います。