Elephant(ASIN:B0002XG8KQ)

rekoba2004-12-09

1999年世界中を震撼させたコロンバイン高校銃乱射事件をモチーフにして撮られたガス・ヴァンサントの作品。齢50にもなるベテランが撮った映画とは思えないほど、初々しい美しさにあふれています。この映画はドラマでなく、事件の記録。台詞もほとんどアドリブだし、演出も最小限。誰かに感情移入なんてできないし、いわゆるドラマ的なセオリーとは別の部分で息をしています。
この手の社会的な映画は、無意味な修飾語に彩られて、なにか意味を見いだそうしがちですが、ぼくはそういうことではないと思う。invitation誌の映画評で蓮實重彦はこう書いています。

視聴者に代わって何かを見せながら事件を社会問題として説明する(テレビの図々しさ)のではなく、視線に何が可能かを代置不可能な事件を通して意識化することこそが、映画における「見る」ことの大胆さに他ならない。


人は、ここで、銃の暴発へといたる若い男女のあやうげな振る舞いを、その生々しい存在感を通してただ見るだけである。あえて説明を回避することが見ることの倫理として生きられている「エレファント」は、現代アメリカ社会批判などとは無縁の水準で優れて政治的な実践たりえている。


ぼくが映画などで最も信用する友人曰くは、「結局のところ、若者は美しいってことじゃないの?」といっていました。


公式HP:http://www.elephant-movie.com/elep_index.html