ピナコラーダは恋の味。

みなさん、ピナコラーダってお酒ご存じですか?
ココナッツリキュールとヨーグルトがベースのカクテルで、
横にパイナップルとかついてて、とってもトロピカルでサンバちっく。
まぁ、平たく言うと、すげー軽薄な雰囲気のお酒です。
ご存じの方も多いとは思いますが、ぼくはそんなにいけるクチではありません。
おまけに、ぼくというキャラクターからは、
ちょっと結びつかない感じだとも思います。


でも、ぼくは夏になると、必ずこのお酒が飲みたくなります。


あれは、忘れもしない5年前。
そのころのぼくは、恋に恋する掟破り成人童貞まっただ中。
生まれながらにしてマイノリティーを志向する
ぼくのアナーキーな性質が裏目に出まくり、
花の大学生だというのにキャンパスを行き交う女子と
ヌキつヌカレつの関係になるどころか、
会話すらろくすっぽしないという
エマージェンシーな状態に陥っておりました。


そんなノー・フューチャーを地でいくような大学生活を送っていると、
不思議と自分の周りにもそういう人間が集まってくるものです。
当然、全員童貞。
自分たちはストレートエッジ*1だ!
なんて気取ってたから、当然金もなくって、ノーマニー・ノーハニー。


そんなぼくらにも時間だけは、売りたいほどある。
ぼくらは、いつものようにキズの舐めあい飲み会を企画したのはいいものの、
みんな暇すぎてまだ飲み屋も開いてないような時間に集合してしまいました。


アクティブなフツーの大学生なら、ナンパとか、ドライブとか、
色々行動するわけだけど、モラトリアム100%のぼくらは
ファミレスでだべったあと、映画を観ることにしました。


その時、偶然やってたのが「ナビィの恋」。
まったく期待せずに観たこの沖縄を舞台にしたラブストーリー。
ブーゲンビリアの赤が印象的で、主演の村上淳西田尚美
そして脇を固める出演者たちのナチュラルな雰囲気が素晴らしい、
本当に素敵な甘酸っぱい映画でした。


終演後、ため息とともに映画館から出て来たぼくら3人。
ぼくらは確実に打ちのめされていました。
そしてみな頭の中には共通の思念が渦巻いていたはずです。


「恋、してぇなぁ」


季節は梅雨が明け、夏の啼き声が聞こえてきそうな頃でした。
ピナコラーダはその時初めて飲んだお酒。
その甘酸っぱいお酒を飲みながら
「今年の夏こそは…」
と3人でキズを舐めあいました。


結局、ぼくが恋できたのは、もっとずっと後のお話。


でも、あのときのピナコラーダは、
とっても甘酸っぱかったなぁ…。

*1:マイナースレットというバンドを率いていうイアン・マッケイという人がうち立てた“ノー・ドラッグ、ノー・アルコール、愛のないセックスはしない”というスーパークールな思想。まぁ、つまるとことろは、人生を余計な部分で燃焼させるな、もっとソリッドに生きろってコト