悪霊の神々

そう、今思うと、ぼくとヒジリンa.k.a香山聖との出会いは運命的でした。昨日の日記に書いた通り、我が地元のエロス達が集う総本山「ライベックス」にて見かけた彼女の販促用ポスター。


「か、かわいすぎる!」


あまりの衝撃にぼくは借りようと思っていたビデオ(当然エロ)を忘れてしまった程です。ぼくと彼女が出会った当時、彼女はまだデビュー前でレンタルの棚には並んでいませんでした。気になることに関しては、変態的な探求心をみせるぼく。ライベックスを早々と後にし、これまた地元のエロス達が一目置いている本屋「中田書店」へと向かいました。そこで“ビデオワールド”“ベストビデオ”“トップビデオ”などアダルトビデオ情報誌を調べること数誌。ようやく発見しましたヒジリン!しかし、その時点ではまだレンタル用ビデオですらリリースされていないので、セル用DVD(一般に発売されてるDVDのこと)は当然未発売。ぼくはパンパンになった好奇心をどこにぶつけて良いのかわからず、数分ほど放心状態になってしまいました。観たいヌきたい、観たいヌきたい、観たいヌきたい。好奇心ははち切れんばかりに大きくなっていきます。仕事も手につかない、オナニーものらない、そんなヤキモキした日々が続きました。そして、インターネットを駆使して調べること数日、ようやく突き止めましたヒジリンDVDの発売日。


8月29日


決戦は金曜日です。まだ1カ月以上ありましたが、その間レンタルビデオはリリースされましたが、ストイックなぼくははやる想いを抑えXデーまで彼女の勇姿をガマンしました。一方、実生活では仕事がアホのように忙しく、ストレスは溜まる一方。世の企業戦士達は、むせ返る湿度にほとばしる汗を拭った。そしてぼくは、エレクトするヒジリンへ想いにほとばしるガマン汁をティッシュで拭いたのだった。

Xデーも目前に迫った8月25日。その日は嵐のような仕事もようやく片づき、平穏な月曜日でした。ぼくは来るべきXデーに備えて、ヒジリン情報を検索していました。すると、某2ちゃんねるにてヒジリンのスレッドを発見! ぼくは基本的にはかの巨大掲示板は好きではないのだけれど、情報収集源としては非常に有益な場所なので、調べモノがあるときはしばしば利用することがあります。すると、そこにはレンタルビデオではもうすでにリリース済みのヒジリンのデビュー作に関する、気になりすぎるレビューが書いてあるではありませんか。

地獄に集う鬼畜たちの声を抜粋してみました。カッコ内はぼくのマインドヴォイス。


6 :名無しさん@ピンキー :03/07/24 23:38
喘ぎ声でかい。
(何ですと…)

9 :名無しさん@ピンキー :03/07/25 00:25
攻め好きらしいんでM男君はハマるかも?
(攻め好き? ウ…ウソ……ぼく好み)

20 :名無しさん@ピンキー :03/07/27 21:48
手コキ好きにはたまらんコだな。
(手コキ好きッス! メチャクチャにされたいッス!!)

103 :名無しさん@ピンキー :03/08/08 00:52
デビュー作の最初のカラミでいきなり手コキで大発射させたのにはたまげたな。
(大・発・射!……先輩…もう止めてください……)


この時点でぼくのボルテージは最高潮。今すぐ観たい。そして、今すぐヌきたい。29日まで待てない! 鬼畜情報によると、ヒジリンは「喘ぎ声がでかい」らしく、「M男君がハマるかも知れない攻め好き」の女の子。しかも、デビュー作の最初のカラミでは、「手コキ」で男優を「大発射」させてるらしい。もう仕事なんてどうでもいい。帰り際にレンタルします。低画質でもガマンします。ガマン汁は止まりません。

ぼくの頭の中では地獄の住人たちの言葉が、まるで呪詛のように繰り返されます。
「喘ぎ声でかい」。(ヤメろ!)
「攻め好き」。(ヤメてくれ!!)
「手コキ」。(頼む……)
「大発射」。(ああああああぁぁぁぁ…)
もうぼくの自我は崩壊寸前。そう、ヤツらは姿なき悪霊。壊れゆくぼくをまるで喜劇を楽しむかのように、笑いながら眺めています。朦朧とする意識の中で、数々の音がぼくの鼓膜を通過していきました。いったいどれだけの時間が過ぎたのでしょう? 気がつくとぼくはエロス達の須弥山*1である伝説のラムラタ横浜店*2の前に立っていました。悪霊たちがぼくをココまで導いてきたのです。今まで数々の猛者が、何度探しても発見できなかったラムラタ横浜店。横浜の繁華街の中心地に位置するそこは、まるでスラム街のような場所でした。やくざ、売春婦、売人、公安、汚職警官、ストリートチルドレン……。人を人として信じられなくなった人間達の掃き溜め。彼らは不意の闖入者であるぼくを、奇異な目で見つめます。ぼくはそれら無数の視線から逃れるかのように、店内に足を踏み入れました。

店内にはまるでコンクリートジャングルを揶揄したかのようにそびえ立つ高い棚が、無数に並んでいます。その棚には、一面DVD(当然エロス)が敷き詰められています。さすが真のエロスの集う聖地。品揃えも圧倒的です。驚異的な物量に圧倒されながらも、ぼくはさらに奥へ足を進めます。すると、そこには女優系の棚があり、噂でしか聞いたことのない女優の作品なども多数存在しています。ガマン汁ほとばしる、否、胸躍る気持ちを抑えつつ、まるで万華鏡のようなめくるめく作品群に魅了されていました。

その時です。ぼくの頭の中に再び例の呪詛が鳴り響きます。このままでは、再び壊れてしまう。呪詛を振り切るように、棚に並ぶ虹色の女優たちに目をやりました。
すると……


そこにヒジリンがいるのです。


ぼくは混乱しました。8月29日発売だろう?今日はまだ25日じゃないか?ぼくは鬼畜たちの呪いで頭がおかしくなってしまったのか?呪詛と混乱が渦巻くぼくの頭に、誰かの声が響きます。

「顔を上げて」

重たい頭をなんとか持ち上げると、ヒジリンのDVDの前に一枚のPOP*3があります。読んでみると……


世界最速先行発売!!
「香山聖ちゃん、月野はるかちゃん サイン&握手会」
DVDをお買い上げのお客さまに、先着でイベント整理券をプレゼント中!!


あぁ、カミサマ。
地獄に仏とはまさにこのこと。
その時は夢中で気づきませんでしたが、ぼくをヒジリンのDVDへ導いてくれたあの声。
ぼくはその声の主を自宅に帰った後に知ることになるのです。


【つづく】

*1:「しゅみせん」と読む。仏教の世界観で世界の中心にあるといわれている伝説の山

*2:ちなみ本店は魔都秋葉原

*3:紹介文とかが書いてある販促用のツール。CD屋さんの推薦文とかが書いてあるアレです