Trip hopについて大いに語る。4

rekoba2004-02-05


この「Protection」というアルバム、
ほぼ全曲が名曲といって良いほどの完成が高いのですが、
Trip hop/アブストラクトヒップホップへの影響度という点では、
“Weather storm”という曲を外すことはできません。


この曲は、ブレイクビーツにピアノソロというシンプルな楽曲です。
しかしながら、この曲が画期的だったところは、
ブレイクビーツをより複雑にリプログラムし、
そこにネタもののループをかぶせるのではなく、
流麗なピアノソロを配置したところにあります。
それまでのヒップホップ的なピアノリフのループとは違い、
ピアノソロをドラマチックに展開させることで、
より噦聴かせる器楽曲に仕上げました。
この構成&展開はクリエイターたちを地味に刺激し、
Trip hop/アブストラクトヒップホップ双方の表現を
飛躍的に広げたんじゃないかな、とぼくは思います。


その証拠に、この作品が発表された以後、
U.F.Oや藤原ヒロシなどさまざまなアーティストが
この曲と同様の構造の楽曲を発表していました。
気付けば、当たり前のようにあるタイプの曲ですが、
たぶんルーツはこの曲じゃないかなぁ、と思います。


そんなこんなで90年代半ばには旺盛をきわめたTrip hopでしたが、
96年頃になるとトレンドは徐々にJungleやDrum`n Bassへ移行し、
Trip hopは過去のサウンドとなっていきました。


一方、アブストラクトヒップホップも
その表現がヒップホップ的に一般化してきたこともあり、
アブストラクトヒップホップ」という言葉自体が死語となりました。
Five Deezなんかは、その辺の影響を自分たちなりに解釈し、
面白いサウンドを作っている好例なのかもしれませんね。


そして、Trip hop/アブストラクトヒップホップの
ダウンビート系アーティストの一部は、
ブレイクビーツのより複雑なプログラミングを追求し、
現在「エレクトロニカ」と呼ばれる非常に実験的な音楽へ移行していきました。
PREFUSE 73なんかは、
まだTrip hop/アブストラクトヒップホップの香りが残った
エレクトロニカのアーティストといえる存在だと思います。


思いつきで書き始めたのですが、Word文書のページ数にして、
実に6ページにもわたる非常に長い文章になってしまいました。
果たして最後まで読んでくれる人がいるのかどうかは、
はなはだ不明ですが、一応、これにてTrip hop講座は終了といたします。


とくに資料とか読みながら書いたわけではないので、
間違ってるトコも多分にあるとは思いますが、
その辺はご容赦くださいな。