Stand Alone Complex

rekoba2004-10-28

攻殻機動隊Stand Alone Complex(以下S.A.C.)における「笑い男事件」とは、「顔の見えない不特定多数の個別の意思が、同時多発的に共通の意思へ感染していく現象」を描いたものでした。S.A.C. 2nd GiGにおける「個別の11人」とは、情報操作によって意図的にその現象をコントロールするというものです。S.A.C.には、2ちゃんねる(以下、2ch)を思わせるような描写が多々あるのですが、ぼくは普段ほとんどをみない人間なので、これまでその現象を実感として理解することはできませんでした。しかし、一連の地震報道における2chの動きを目の当たりにして、ようやくその意味を実感として理解することができました。それを最も顕著に感じたのは、長岡にバイクで救援物資を持っていこうとする人々のスレッド(id:iori3:20041027#P9)でした。長岡にたどり着くまでの状況を事細かに、不特定多数の人が書き込みをする。コレに関しては明らかに善意の感染なわけで、たとえそれが偽善なのであろうとも、行動それ自体は評価されるべき素晴らしいものだと思いました。現にぼくはマスコミの件に関しては、「共通の意思」の感染者ですし。しかし、それが善意を利用した情報操作であった場合、このStand Alone Complexという現象は非常に恐ろしい、得体の知れない意思となるでしょう。彼らは顔のない個別の意思。そこに個性は存在しても、個人は存在しません。いくらでも代替可能な、強固な個別の意思。たとえば、なにがしかの悪意が介在するスレッドがあり、そこに前述のバイク部隊スレッドのように実際に行動に出る人物が出現した場合(この場合は仕組まれた出現)、正義感あふれる無力な人々は今回のように彼に感情移入するでしょう。無力の自分の変わりに行動してくれる勇者に。そんな状況での共通意思(世論?)の形成は、それほど難しいものじゃない。これはRPG感覚が浸透した現代ならではの事件かも知れません。
しかしまぁ、こんな仮説は2chの浸透度にもよるわけで、簡単に成立するとも言えません。しかし、今後そのような現象が起こる土壌というのは、現在確実に育っているわけです。ぼくは、今回2chという現象の一端に初めて触れ、そんなことを思いました。S.A.C.はたかだかアニメなのかも知れませんが、10年後いや5年後、この作品がどのように位置づけられているか、それが楽しみです。